奨学金を前倒し返還して。
日本学生支援機構から、144万円をお借りしていた。
30才になった時、ふいに思い立って「全部返そう」と思った。
その時点で残り70万円くらい。
70万円がいっきに引き落とされても大丈夫なくらい貯金していたし、
数万円とは言え利息が減らせるのも魅力的だった。
手続きはあっという間に終わった。
返還証明書が届いた時、
卒業証書をもらったような気持ちになって
泣けた。
全然、がんばって返してます!って気持ちはなかったのに。
ただ、とてもとても嬉しかった。
この喜びを彼氏に話したいと思ったけれど、
私立大学を奨学金なしで卒業している彼に話しても、わかんないよね、と思ってしまった。
そんな小さなことはどうでもいいはずなのに、
スタートラインが違うんだと思ってしまった。
奨学金を前倒し返還して、
あ、もう借金ないんだ、と思ったら、
不自由さなんて感じていなかったのに、
ものすごく自由になったような気がした。
もう借金を返すために働かなくてもいいんだ、
好きなことをしていいんだ、と思った。
そして、嘘みたいだけど、それから半年もしないうちに転職した。
奨学金を借りなくても大学に行けたら、
よかったかもしれない。
でも、奨学金を借りられたから大学に行けた。
私は、後者の方をずっと覚えていたいと思う。